nakamurk’s diary

日々思うことは残していきます。しっかり生きます。

書評「新人間主義の哲学」

たまには難しい本も読んでみようということで拝読。2019/02/22から2019/3/15まで、4時間20分かけて読了。でも、一回では理解しきれていないですので、こちらも再度読み直しが必要です。論理的に書かれているので、読みやすいとは感じるものの、所々で志向が置いて行かれることもしばしば。労働力の搾取自体は過去から連綿と続くことはわかりますが、こちらの本が出版された昭和47年当時から消費社会が続いていたというのは意外でした。また、進学競争や入社試験というような現代の社会でも、まさに話題の中心となるようなことが、この当時から言われていたということが意外でした。自身の不学を嘆くばかりです。更には、例えば企業における愛社精神の薄れなども疎外という概念で説明がつくことも、意外でした。「まさにその通り」と感じることばかりでした。哲学という学問のことを、何というのか「血の通っていない形式上の何か」とでもいうようなものだとばかり思っていました。本当に反省です。会社の後輩に触発されて、今回、哲学の本を読むに至りましたが、本当に良かったと思います。

印象に残っているところ

自主的ではなかったのか…(P.12)

いわゆる「余暇」には、我々は人間的な生活を営んでいるであろうか。一見したところ、「余暇」には自分の自主的判断にもとづき人びとは自由に活動しているかに見える。しかし、より接近してみると、そこでもけっして自主的とか自由とか言えない状況が見いだされる。例えば、旅行したいが先立つものー金ーがない。そもそも旅行したいという欲望も自発的なものでなく、実はレジャー産業の宣伝によって知らず知らずに自分の内部に植え付けられらものであった。

余暇についての話がありまして、いきなり頭をガツンとやられたような感覚になりました。この時代から、宣伝によって自発的でない購買意欲というものが刺激される社会ができていたということに、興味を持ちました。今の社会は多くの宣伝があります。

人間の欲はきりがない(P.19)

当時は夢であったことが、今日では実現されている場合が多い。しかし、社会の生産力が増大し、社会的諸条件がその発達した生産力に適合するように整備されると、それに応じて人びとの欲求も拡大する

この前本屋さんに立ち寄った際に、樹木希林さんの本が売られていました。人間の欲望というやつは際限ない、厄介な存在だと思います。もちろん、もっと良くしたいとか、あれが欲しいという感情は、人を動かすのですが、尽きることのない欲望は、自身の身を壊しますし、みんなで取り合えば喧嘩になります。

会社の制度も透けて見える(P.191)

間が飛びます。この間の部分は、もっと読み込む必要があります。本当に難しいorz。さて、会社の制度が透けて見えるというのは、会社と従業員との関係性が薄れてくる。そもそも、資本主義では、労働力が搾取されるだけの関係ですから、愛社精神などというものは、何者かによって作られる幻想なのかもしれませんが、それでも、私自身は帰属意識というものが好き、というか、大切にしたいと考えている方なのだと思います。しかしながら、企業のサークル活動やカウンセリング、あるいは社内誌の発行や提案制度などは、意図的に従業員がもつ無気力や孤独感への対処として実施していることだと書かれているのを読むと、この本を読む前から、薄々は理解していたことのはずなのに、何処か白々しく、げんなりですね。

自然としての人間(P.183)

最後の章に入り、人間とは何かについて考えさせられます。人間は自然の一部なのだという感じですね。時間がなく端折って書いてしまっていますが、こちらも正しく理解しなければならないというか、自分の中に軸を築いておきたいことだと感じました。この部分を読んでいて思ったのが、哲学という本を読む前に思っていた、漠然抱いていた哲学のイメージの気がします。

疑問

  • 価値とは何か、資本論などp108あたり
  • 可換紙幣であれば、全体量は世界で上限があった。兌換紙幣となり、青天井となってしまった。

調べた単語、印象に残っている表現

一般用語

  • 交通戦争
  • ヒッピー
  • マルクス主義
  • イデー:理念
  • アナーキズム
  • 紐帯(ちゅうたい、じゅうたい):社会を形作る結びつき
  • 物神崇拝 フェティシスムス

哲学用語

  • 捨象(しゃしょう)
  • 揚棄(ようき)
  • 止揚(しよう)
  • 所与(しょよ)
  • 合目的的(ごうもくてきてき)
  • 疎外論、疎外感

印象に残っている表現

叫ばざるをえないほど、我々の現実は非人間的。

紹介のあった文献

もっとたくさん紹介があったように思いますが、ノートに書いていたものをとりあえずあげておきます。

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「哲学の本」というもののイメージしていたよりも、読みやすかったです。もちろん難解ではありますが。なおかつ、現代社会でも十分に考えさせられる内容、あるいは現代社会でこそ考えなければならない内容であると思います。これから社会人となる学生さんにも、入社して〇年という「転職市場、云々」で煽られている我々の世代の方にも、人生の折り返しに来た社会人の方など、皆さんに読んでいただきたい一冊です!