nakamurk’s diary

日々思うことは残していきます。しっかり生きます。

映画「わが母の記」(2019.05.07、Gyao!にて)

例のごとくGyao!さんにて観ました。配役も音楽も、そして話の舞台もどれも良いですね。戦後の時代のお話ですが、家族とは何かを考えさせられる、今の時代にこそ見るべきものの一つかと思います。そう思うからこそGyao!さんも提供してくれているのでしょうけどね。勘繰れば樹木希林さんの新しい本の売り上げを伸ばすためでしょうね。

配役について

おばあさん役の樹木希林さん、おばあさんの息子の役には役所広司さんとこれだけで揺るがないのですが、孫娘にはミムラさん、菊池亜希子さんそして、宮崎あおいさんこんな言葉で表現してよいかわかりませんが、実にかわいい(笑)。落ち着いた服装の時代がまた来てほしいものです。まあ、女優の皆さんが美しいのもありますがね。服装も昭和のものだからか落ち着いていますね。なんと言うのか、見えないから妄想が膨らむわけで、出すなとは言いませんが、隠すからこその趣も意識していただきたい(笑)。そのほか、オアシズの大久保さんが演じてらしたとは気が付きませんでした。皆さん役にぴったりはまっていて、違和感がありませんでした!

老いと家族

このところ人の死というものを意識させられる出来事が続きまして、否が応でも胸に刺さるものがありました。人として生まれれば、老いというものは避けては通れないし、家族という関係も意識しなければならないわけで。特に現代では命の現場というものは病院や施設に追いやられ、そこで働く一部の人にしか現実として認知されないのではないかと思います。この作品の時代(1964年ごろ)でさえ、床に臥せるおじいさんの姿に、恐れというものを感じていたとあるのでなおさらです。そして、それは別れというものが強烈に迫ってくることを意味するのではないでしょうか。ボケというものが始まるのか、それともそのままで死を迎えるのかはその人によるのでしょうが、徐々に終わりに向かっていくのか、それとも、余命宣告を含め死の淵に立たされることになるのか。そして、家族として受け止めなければならなくなるのか。名古屋で敬老パスを使う父が、終活としてなのか本を私に譲る姿に、内心、気が気ではありません。

親と子の関係

役所広司さんの演じる昭和の父親という姿を見ていると、平成の世に生まれた私には少しなじみの薄いような関係であったように思います。親という絶対的な立場で子供の進路を決めようとする父親像もあれば、子供を応援する立場として親元を離れる子供のことを気遣う父親像もまた一つです。私の家ではと言う枕が付くかもしれませんが、特に前者のような親としての理不尽な振る舞いと言うのは珍しいものになっているのかもしれません。そしてもう一つ思ったのは、子供自身も一つの人格として堂々と親に対峙すること、このイメージがなかったですね。家長の言いつけには逆らえない、絶対的な存在=口答えもしないものと思っていましたが、映画の中とはいえ理路整然と父親に対して反論する姿は、親子としてのあるべき姿なのではないかと思いますね。正負いずれの方向でも強烈に関係を持てば、その後の人生でも大きな影響を与えるのだと思います。しかしながら、現代のような希薄な関係性では、つながりも希薄となり味気ないものになっているのではないでしょうか。それは家族だけでなく、会社などでのつながりもそのように思いますね。

兄貴分と仲間たち

人と人とのつながりで言えば、作家先生の家とは対照的に、がやがやした飲み屋さんのシーンがありました。男ばかりでいろいろと飲んでいるのですが、樹木希林さんが扮するおばあさんが徘徊しながら訪れると、心優しい壮年期の男性が「どうしたの」と質問します。まずもって、現代ではありえない構図のような気がして、羨ましい限りです。知らない場所でも、話を聞いてくれる人がいるというだけで頼もしいのです。加えて、トラック乗りが使うお店ということもあったのでしょうが、みんなでおばあさんの話を聞こうということになり、そして、おばあさんが向かいたい場所に連れて行ってくれるという心優しいところまで描かれています。困ったときはお互い様ということなんでしょうね。入れ違いとなってしまった追いかけてきた息子と孫娘も同じように、トラックの運ちゃんが追いかけてくれます。そんな平和というか、人と人とがつながった世界にあこがれます。現代はつながった風の殺伐とした利己的な世界です。あえて勘繰れば、映画などの娯楽とは「お前たちこういう素晴らしい世界が好きなんだろ」、と感動を押し売りしてきているのです。もちろんそうは言っても、感化されるということは素晴らしい世界であるのだけれども。。

お求めはこちら、と仲間たち

始めにも書きましたが、何でなくなった方の書籍などが発売されるのでしょうかね?もしかしたら、残された方に印税が入るようにとの思いで残されたのかもしれないし、それとも、守銭奴のごとき方々の肥しとなるのでしょうか。それはさておき、作品はとても良いので、ぜひおすすめします!素晴らしい映画を素晴らしいものとして素直に受け止められる、勘ぐってしまうほどにやつれた心に響く作品でした。